楊さんの涙 ― 2005年06月29日 23:32
今回は、NHKと中国の共同取材番組の話。
土曜日の朝、何気なく見たテレビで、中国河南省の女性たちが新彊ウイグル地区の綿花摘みの出稼ぎに行くドキュメンタリーをやっていたので、1時間ほど引き込まれるように見てしまった。(日本でも放映され、見た人も多いでしょう。)
上海ではパジャマ外出のことを笑いながらも、中国人と一緒に働き、飲み、カラオケをしたりして、ゆとりも感じているのに、中国にはこんな苦労をしている人達が大勢いるのだと、考えさせられた。
薄い寝具を持っていくのは工場地帯への就職と同じ。風呂もシャワーも暖房もない倉庫の宿舎に、3ヶ月も住んで、夜明けから日没まで腰を折り曲げ、手をしもやけでポンポンに腫らしながら綿花を摘んで、食費や交通費を差し引くと、3ヶ月の報酬が1万円程度と聞くと、なんだか悲しくなる番組だった。
その出稼ぎ集団の中に楊さん(不確かな記憶)という若い女性がいた。新彊に出かける列車の中で、「お金が入ったら携帯を買う」と目を輝かせていた。
ところが、3ヶ月たち、報酬をもらってみんなが街へ買い物に出かけた日、楊さんだけは残っていた。
「携帯は買わないの?」
「お金は何に使うの?貯金するの?」
と聞いても、何か言いたそうなのに何も言わず、しばらくしてから
「私、わからなくなった」
と言ったこと。
「お金は両親に渡す」
と言ったこと。
そして、ひと筋の涙が流れたこと。
これらのことが私にとって大変印象的で、かつ胸が痛くなる思いだった。
番組では、そこまでの事実を映像として伝えただけであるが、私は次のように理解した。
綿花摘みに慣れた年配者なら、出来高は楊さんの2倍にもなるという。それなら食費や交通費を差し引いても3万円くらいの手取り額になる計算だ。それなら、1万円の携帯を買ってもまだまだ残るけれど、楊さんは携帯なんか買ったら親に渡す金がなくなるのだ。
都会の若者には、携帯電話は驚異的に普及しているけれど、現金収入のほとんどない農村の若者にはきっとまだまだ憧れの品だと思う。
「期待をふくらませていた携帯が買えない」という若い楊さんの大きな失望がそこから伝わってきた。
それでも楊さんは、親にお金を渡す方を優先したのだ。
これまで見聞きしたことも含め、中国の若い人たちの親を思う気持ちに頭が下がる。
そして、私の周りの上海の若い人たちと楊さんたち、同じ中国の中で、こんなに格差があって良いのか?とあらためて疑問がふくらんだ。
これら出稼ぎ労働者を斡旋する業者の儲け過ぎだとの噂も後日耳にした。
土曜日の朝、何気なく見たテレビで、中国河南省の女性たちが新彊ウイグル地区の綿花摘みの出稼ぎに行くドキュメンタリーをやっていたので、1時間ほど引き込まれるように見てしまった。(日本でも放映され、見た人も多いでしょう。)
上海ではパジャマ外出のことを笑いながらも、中国人と一緒に働き、飲み、カラオケをしたりして、ゆとりも感じているのに、中国にはこんな苦労をしている人達が大勢いるのだと、考えさせられた。
薄い寝具を持っていくのは工場地帯への就職と同じ。風呂もシャワーも暖房もない倉庫の宿舎に、3ヶ月も住んで、夜明けから日没まで腰を折り曲げ、手をしもやけでポンポンに腫らしながら綿花を摘んで、食費や交通費を差し引くと、3ヶ月の報酬が1万円程度と聞くと、なんだか悲しくなる番組だった。
その出稼ぎ集団の中に楊さん(不確かな記憶)という若い女性がいた。新彊に出かける列車の中で、「お金が入ったら携帯を買う」と目を輝かせていた。
ところが、3ヶ月たち、報酬をもらってみんなが街へ買い物に出かけた日、楊さんだけは残っていた。
「携帯は買わないの?」
「お金は何に使うの?貯金するの?」
と聞いても、何か言いたそうなのに何も言わず、しばらくしてから
「私、わからなくなった」
と言ったこと。
「お金は両親に渡す」
と言ったこと。
そして、ひと筋の涙が流れたこと。
これらのことが私にとって大変印象的で、かつ胸が痛くなる思いだった。
番組では、そこまでの事実を映像として伝えただけであるが、私は次のように理解した。
綿花摘みに慣れた年配者なら、出来高は楊さんの2倍にもなるという。それなら食費や交通費を差し引いても3万円くらいの手取り額になる計算だ。それなら、1万円の携帯を買ってもまだまだ残るけれど、楊さんは携帯なんか買ったら親に渡す金がなくなるのだ。
都会の若者には、携帯電話は驚異的に普及しているけれど、現金収入のほとんどない農村の若者にはきっとまだまだ憧れの品だと思う。
「期待をふくらませていた携帯が買えない」という若い楊さんの大きな失望がそこから伝わってきた。
それでも楊さんは、親にお金を渡す方を優先したのだ。
これまで見聞きしたことも含め、中国の若い人たちの親を思う気持ちに頭が下がる。
そして、私の周りの上海の若い人たちと楊さんたち、同じ中国の中で、こんなに格差があって良いのか?とあらためて疑問がふくらんだ。
これら出稼ぎ労働者を斡旋する業者の儲け過ぎだとの噂も後日耳にした。
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